Diary

渋谷のビックカメラ

仕事帰りに渋谷のビックカメラに行った。随分と久しぶりだ。

ここには、学生の時分、今から20年くらい前には、ほぼ毎日通っていた。写真家を目指してた自分は、2階の写真関連商品の売り場に赴いては、ネオパンプレストという白黒フィルムとコレクトールという現像液を買ってそのまま、撮影にでかけた。

1日1ロール以上の撮影をノルマに、それこそいろんなモノを撮影した。

車のウィンドウに映る街並み。談笑する人達。綺麗な女。落ち葉。桜。恋人。友達。

撮影後は、急いで家へ帰り、現像液を作って、一晩寝かす。前日作った現像液を適温(確か20度位か)に調整して、フィルムを現像する。

現像する時に、フィルムをステンレス製のドラムに入れるんだが、金属のドラムに現像液を入れるとヒンヤリとする。

ヒンヤリとする金属の筒を赤子をあやすように、ユックリと中が良く混ざるように、しかし、泡だてないように。10秒ほどゆすり、50秒待つ。これをたしか10分ほど繰り返す。

この優しくゆすって、待つという行為の繰り返しが、何かを創り出している、何か崇高な事をしているような気持ちにさせてくれたものだ。

終わったらすぐに、現像液を捨てて、水洗い。今度は定着液を入れてまた数分ゆする、待つを繰り返す。

最後に水洗いしたあと、表面活性剤だっけ?ホコリが付きにくくなる液体にサッとくぐらせて、乾燥させる。

ここまでして、ようやく写真のネガとなる。

そのネガの中からプリントすべきシーンを探す。1ロールから、1シーンでもプリントできればよかった。

その1シーンを一晩中、暗室に篭り何枚も何枚もプリントする。

多くの時間をかけて1枚のフィルムからイメージ通りのポテンシャルを引き出して行く。自分の中のイメージと少しづつ現実を合わせて行く。

今ならPhotoshopで数十分で完了する作業を、膨大な時間とコストをかけていた。

全ての工程が、楽しかった。

かつては大きな売り場面積を占めていたビックカメラのフィルム売り場も、2階の片隅に。

20年前のドン・キホーテ的な勢いだけの自分を思い出しつつ、改めて技術の進歩の凄さと手法の淘汰の寂しさを噛み締める。

related article